■ 2020年 なぜ今土の建築か? /  Potential of  Earth House

循環する生命体としての建築コンセプト

永遠にリサイクルできる素材としての土

長野県のカラマツの木の根と土

宇宙と人が生命体としてつながる

建築コンセプト

土壁の肌理(きめ)

現代の土の建築の可能性をめざす建築

2011年 韓国,2019 フランスの

世界の土の建築の国際会議と

ワークショップへ参加したときの様子

■自然界における土の役割と建築における土

 

   皆様は「土の建築」「土の家」と聞いてどう思われるでしょうか?

 

 古い民家や蔵の壁を思われる方、あるいは見たことも聞いたこともない方・・・それぞれだと思います。

 

 土は「あらゆる生命の根源」といわれ、植物の生産、有機物の分解、水循環の経路、大気組成の恒常性の維持、炭素貯留などいろいろな役割を持ち(*1)、人間にとって非常に重要ですが、

 

 人間の住まいにとっても「土」は9000年以上の長い歴史があり、木とともに最も古い建材です。

現在でも世界人口の1/4~1/3は土の家に住み、その数は木の家より多いといわれています。日本でも縄文時代の竪穴住居の屋根に土を載せていた考察があり、古代約1300年前から平城京や法隆寺の壁に土が使われているなど、長い歴史があります。

 

土は地球上のあらゆる場所で手に入り、気候や場所に合わせ自由なかたちを作ることができます。素材としての美しさだけでなく、調湿・蓄熱・防音・密度・強度・・・など様々な利点があり、何より

 

「永遠にリサイクルし続けることができる唯一の素材」 という特徴があります。

 

 

 

 日本では土を塗る職人さんを「左官」(さかん)といい、その塗り壁の美しさと技術は世界最高峰ですが、近代化が進み、建築の工業化と工期短縮・効率化の中で、手仕事の芸術ともいえる「左官」特に「土」を活かす場が激減しています。

 

 しかし、日本を含む世界の建築家・職人さん・ビルダー・研究者の方々が立ち上がり、1970年代後半以降、学校での研究やワークショップが広がるなど復興がはじまりました。特にこの20年、世界的な連帯の中、土の建築が、最先端のテーマとして現代建築の中で一つの流れをつくっています。2016年には現代の土の建築を表彰する国際コンペTERRA AWARDも行われました。(*2)

 

 

■2020年 建築に土を使う意味

 

    その中で2020年に土を使う意味は何でしょう?

 

 

 2020年は産業革命前からの世界の平均気温上昇を「2度未満」に抑え「1.5度未満」を目指す「パリ協定」がスタートした年です。

 

 近年様々な異常気象が続き、気象危機といわれる今、人間と地球にとってこの10年の暮らし方が非常に重要といわれています。今年(2020年)のコロナウイルスの世界的蔓延も「人類が森を破壊したこと」との関連が指摘されており、今こそ衣食住・仕事すべてのライフスタイルをできる限り脱炭素化し、シフトチェンジをするべきときです。

 

   そのためにも建築に土を使うことがとてもいいのです。

 

 地球温暖化の大きな要因であるCO2排出量について、日本は2050年までの長期目標で現状から60~80%の削減を目指していますが、住宅・建築分野からの排出量は全体の約1/3といわれ、その中でも製造過程で多くのCO2を排出するセメント生産の割合が大きな比重をしめています。現代においては、アメリカが19世紀の90年で使ったセメント量を中国が2011-13年の3年で使ったというほど爆発的に使われています。

 

 CO2排出削減のために、建設産業においてセメント使用を少しでも「少なく」し、「化石燃料エネルギーをできるだけ使わない暮らしをすること」が重要なのです。

 

そのために「木」の活用も効果的ですが、「土」は木よりもさらに1/20~1/100も製造のエネルギーが小さく、大きな

蓄熱性・調湿性を持ち、木と組合せて使うとさらに大きな効果があります。

 

 

 

人間にとって心地よい空間を作り出すだけでなく、全国の「土を使った」住まいのエネルギー消費量データからも実証されていて、実際にエネルギーを使わない暮らしをすることができます。

 

 

 

■生命体として建築をつくる・・・ いのちをよびさますもの

 

 

   しかし、単に土を使うだけは十分ではありません。

 

近代の「成長」から現代の「循環」の社会にシフトチェンジが必要な今、ものづくりのコンセプトを根本から変える

必要があります。

 

 その中で、人間にとって心地よい場所をつくるために

 

・建築もできるだけ環境負荷がない

 その場の自然素材と自然エネルギーを使い,土に還るつくりかたをすること

 

これが一番の基本になります。

 

その上で

 

・自然と人・構築物が分離しない建築をつくること。

・部分と全体が有機的に統一されていること。

・中と外でエネルギー代謝の流れがあること。

・運動し、変化する動きがあること。

・生きるために、その部分が入れ替わり新たに更新されること。

・風景の一部として場と共振し、周囲に力を与えること。

・素材の肌理が人に心地よさを与えること。

・人に安心感を与える、やわらかで呼吸する場であること。

・・・

 などが私の考える、これからの建築の姿 「生命体としての建築」=いのちをよびさますもの です。

 

 同じ土の壁でも西洋の壁は構造体でもあるため、分厚く中と外を分断するものでしたが、日本建築では土壁は木の

構造の揺れを吸収して柔軟に動くもので、私としては

 

 中と外を区切らないで、呼吸する東洋的な「やわらかな壁」を目指しています。

 

 

■近代建築の表現の先に

 

 日本で土壁というと民家や蔵を思い出され、古いものを想像されるかもしれません。

そのような世界各地の伝統的建築は大きな人類の遺産であり、それを現代に受け継ぐことが大前提です。

その上で私はそれを「保存」するだけでなく、「発展」させ、近代建築の先の「現代建築」の表現としても「土」の可能性があると考えています。

 

 近代建築は世界を人や人工物と自然を分け、無色透明で抽象的な平面、空間、線からなる「均質的空間」として扱ってきましたが、それに対し、世界には「肌理(きめ)」があり、その細かな「粒子」がつながって世界をなしているという、J.Jギブソンが唱えた20世紀後半から一つの流れになっている考え方がありますが、

 

  「肌理のある粒子の表面からなる建築」・・・それこそが「土の建築」なのです。

 

 

ただし、建築を粒子に分解し、それを組合せただけでは近代建築と変わりません。

 

 

 

 建築は、その場に強く結びついた精神をもった「全体性」を体現できるとき「力」を持つのではないでしょうか? 単なる「部分」の集合ではない「全体性」の回復が必要です。

 

 

  私は建築でその鍵となるのが、

 

・太陽、大地、宇宙とつながる「存在感」。

・大地に根ざし呼吸するやわらかな「生命力」。

・運動する覆いから始まる「物語」。

 

であり、その基本となるのが「覆い」や「囲い」が人間をつつむ「安心感」だと考えています。

 

・・・それに一番適しているのが「土という素材」です。

 

 

  近代建築や日本の伝統的建築は、「骨組」である柱と梁の構造を重視し、壁や天井はそれに付随するものとして考えられてきましたが、私は呼吸する「皮膚」や「肉体」としての「覆い」のやわらかなかたちを実現するために

「適材適所の構造」がある という考えが 現代では有効ではないかと思っています。

 

  その場所に合わせ、その場所にしかない自由でやわらかな形状の「覆い」からなる建築。

それを地域の「土」を使うことで人々がその地域に誇りを持ち、力強く心地よい建築が生まれる。

 

一見変わってるように見えるかもしれない、このサイトでご紹介している事例は、その考えに基づいてつくられて

います。

 

 以上、「土」は縄文時代に帰る「回顧的」なものではなく、近代建築の先にある「現代建築」として

場所、人、手、生命力、流れ、粒子、全体性、覆い、皮膚・・・ 

 

    ・・・ そのすべてをみたすものとしての「シンボル」なのです。

 

 そして、そのコンセプトをその場でしか出来ない、地場の職人さんと素材でつくることに「意味」と「価値」

があります。日本各地、志のある「左官」さん「大工」さんをはじめ、技術を持つ「職人」さんがたくさんいらっしゃいます。 その方々とのものづくりは、これからも無限の可能性があります。

 

 

 

■土建築の現代化  様々な構法と科学的根拠、集まってつくる

 

 

 土の構法は様々あり、現代に合わせ無限の発展が可能です。

これからの時代、日本の伝統的な塗り壁だけでなく、海外で盛んな版築(はんちく)や土ブロックと組合せた新たな構法が考えられますし、社会的な問題になっている工事残土の活用や機械化も視野に入れ、新たな土の建築の現代化を目指したいと考えています。

 

 

 現在、土がいかに環境負荷がなく、人間の住まいにとって健康で心地よい場を作れるかが、室内温熱データ、

一次エネルギー消費量、ライフサイクルコスト・・・などの科学的根データが世界で蓄積されてきています。

そちらも紹介しながら、その地域の風土と一体となる土の家を皆様とつくっていきたいと思います。

 

 一方で土の建築は、手仕事からなる初期「コスト」や「工期」がかかることは否めません。

しかし、ランニングコストや廃棄も含めたライフサイクルコストまで考え、数十年~数百年スパンで考えれば、むしろコストはかからず、費用対効果としては一般の住まいより上がります。

 

 そして、土の利点である「みんなで集まってつくる」現代の「コミュニティ」により支え合ってつくるつくり方がもっと広まれば、さらに日本各地でも拡がりが期待できます。

 

 

 

■21世紀を土の世紀に・・・ 必要なのは世界的な「連帯」

 

 

 かつては「暮らしのすべてとともに土があった」時代でしたが、現代では「土」の技術は近代化とともに一度忘れられた技術でもあります。

 

 その技術も現代の視点で先人の知恵を学び直すこと、新たな科学的裏付けを取り広めることが不可欠で、私たちも世界の土の建築のの設計者・研究者・建設者など方々、そして食・農・生物・科学・アート・・・他の分野の方々と連携して新たな時代をつくっていきたいと思っています。

 

 

「グローバルビレッジ」の現代の中で必要なのは世界的な「連帯」です。

 

 2015 年に国連 総会された採択された、2030 年までの持続可能な開発のための目標(SDGS)に関連した項目と して、2016 年、リヨンで行われた土の建築の国際会議で「リヨン宣言」が出されました。

そこでは、 土の建築は

 

「生活の質の向上、すべての人への適切な住居、雇用の創出と経済的機会、文化の継 続と多様性、社会的連帯と平和の構築に貢献できる。」

 

と明言されています。

 

 このサイトではその世界各地の成果も皆様と共有し、少しでも土の魅力が伝わるよう、写真や活動、データも随時アップしていきたいと思います。

 

 

          シフトチェンジするなら、2020年の今です。

 

「土の建築」がこれからの皆様の「省エネ」で「心地よく」「楽しい」暮らしのお供 になることができればうれしいです。

 

             21世紀を 土の世紀に

 

 

 ぜひ皆様と一緒に楽しみながら実践していきたいと思います。

 

どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

 

2020年4月  

 

遠野未来建築事務所  遠野未来

 

 

 

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(注)

*1 土の科学/有馬一剛著

*2 Terra Award 2016  当事務所の設計監理作品 神田SU/Nest House が Honorable Mentioned 佳作優良賞 受賞。 

    Build the earth with craftsmanship

 

            with local earth, trees, and people

              Architects studio in Karuizawa Japan

     

        遠野未来 建築事務所

地域の土・木・人で 大地を建築する

軽井沢の建築設計事務所

 

 ■English TEXT   

PROFILE  CONCEPT - 1  2  3  4  5    7     9 

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