Earth Library
東京・九段 (2020)
before
after
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All Photos :Takeshi noguchi
曲面の土壁
版築
東京の残土 再利用東京建設残東京建設残土
じねん
自然
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■ 設計主旨 Concept 環境負荷低減をめざす、工事残土を使った建築の可能性
日本の建設発生土は平成30年で2億8998万㎥ そのうち場外搬出されているのが 1億3263万㎥、(東京ドーム124万㎥ 約106個分)と輸送によるエネルギー、CO2排出による環境負荷が大きく、それを建築に使うことができれば大きな削減になる。これは世界共通の課題でもあるが、土の現代建築への活用が進むフランスでは地下鉄工事の残土を利用したパリの再開発の計画が進むなど、実用段階に至っている。
このプロジェクトは、関東ローム層である「東京の工事残土」を再利用し、版築(はんちく/Rammed Earth)の壁による外寸の直径が1.7m、中のくぼみに人が一人入ることができるという極小空間である。単なる土塀ではなく、土の空間の今後の可能性として居住空間の中に取り入れることも想像しやすいように「本」もおける飾り棚を組み込んだ。敷地は東京・九段の洋館、九段ハウスの日本庭園で、円形の形状はその隣にある古い井戸と対応し、その土地の「地霊とのつながり」も意図している。
■版築構法について
版築とは、1300年以上前の法隆寺の土塀にも見られる土を石灰などと混ぜ突き固めた構法で、海外では機械化やプレファブ化も含め現代建築への活用が進み、土の建築の「最先端」と注目されている。
版築構法は日本でここ20年ほどの間に実例ができてきているが、建築基準法上定まった基準がなく、各設計者独自の構造計算と安全基準の検証により行われている。ここでは、設計者と他の事例の圧縮試験データを元に構造の安全性を構造計算により確認し、高さ2m以下で建築物にも工作物にも当たらず、不特定多数の人が来ないことも踏まえて建設した。
土の固化材としては、環境負荷軽減を目指すためセメントを使わずに「消石灰」を使い、テストピース作成の上強度を確認し、土と砂の重量比で10%という配合にした。
土だけではなく、補強として壁の中にはタテ方向にD13の異型鉄筋を50φの真竹に入れて、砕石を付き固めた地盤の上に突き刺し、ヨコ方向にも@約350mmでD10の異型鉄筋を割竹でカバーしてつなぎ、鉄筋と土は直接触れないようにしている。
本来土の壁は「屋根」があり、軒が出ていれば雨ががりによる風化も少なくできることを承知の上で、今回はアート作品として「風化も作品」というコンセプトのもとつくられた。
事前に型枠下準備を終えていたため現場の版築作業は6日で終了し、1週間の養生の上自然系の撥水剤を塗布し、引き渡しされた。
竣工約半年後の点検では、セメントを使わないでも風雨にさらされても全く崩れていないことがわかった。下から約1/3のところに石灰による白華(エフロレッセンス)が所々見られたが、1/5濃度の塩酸を刷毛塗りしてほとんど目立たなくなった。
■土の建築の今後の可能性に向けて
循環型社会がめざされている21世紀に「土」特に建設残土を建築に使うことは、環境負荷削減に効果があり、資源の活用としても大きな可能性がある。このプロジェクトはその小さな一歩であるが、今後の日本における版築の経年変化の実例として、長く様子を見、今後も各地の土を現代建築に生かしたいと考えている。
詳しい工事内容とプロセスは遠野未来建築事務所
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■Earth Library Data
・設計監理:遠野未来建築事務所 担当:遠野未来
・施工:齋藤左官 齋藤剛史
・建主:NI-WA
・所在地 東京都千代田区 九段ハウス
・竣工年:2020 5月
・施工面積:1.38M2
●仕上げ
壁: 版築壁t20~450mm(東京多摩地区建設残土使用)
笠木: 防水材、土入りモルタルかき落とし t30
基礎: 版築三和土 h250
土台: 砕石0-40 t100
■ 使用建材
・工事残土 (東京多摩地域産材)
:(有)松田興業 www . matsuda kougyo .com
・砂:
・消石灰:農業用
・にがり:塩化カルシウム
・砕石
・竹:真竹50φ
・異型鉄筋:D10,D13


