■1 建設コストについて



● 土壁の家のコストについて どのくらいかかるのですか?
既成品のように定価がないので、土の家のコストは構法(壁のつくりかた)と地域、職人さん、技術、材料・・・
によって異なり、わかりづらいのでご説明します。
一般論としてこれまでの当事務所の経験や他の事例を聞くと、土壁を使う家は30~40坪の建坪で
70~80万円代/坪 で建てられることが多いのですが、これはあくまで基準金額で地域や建坪、設計内容によって異なります。
参考までに 当事務所が手がけることの多い関東甲信越地方では、あくまで標準金額ですが、壁の面積M2あたり
竹小舞 4,000円
荒壁表塗り 4,000円
荒壁裏返し塗り 3,000円
内壁 中塗り土塗り 3,500円
(外壁 佐漆喰金ゴテ仕上げの場合 10,000円/M2 ) 前後が一つの目安です。
もちろん左官さんによって異なりますので、その都度見積もりを取る必要があります。
====
この目安でいうと 竹小舞・荒壁・裏返し・内壁 中塗り仕上げをすると
14,500円/M2・・・47,850円/坪・・・約5万円弱/坪
一般的には30坪程度の家を土壁でつくる場合(壁の仕様によりますが)
30,000円/坪 90~100万円程度 他の素材と比較し、初期コストは上がるといわれています。
しかし、これはあくまで初期費用であり、建物が解体されるまでの土壁の省エネ効果による光熱費の減少、
他の素材と比べたメンテナンス費用の削減、健康面での有益性、Co2排出量の削減・・・
を考えると土の建築は総合的に他の素材と比較し、コストがかからないとわかることでしょう。
また内装の場合の仕上げコストは
石膏ボードにビニールクロスの場合 1,000/M2~
塗装の場合 1,500円/M2~ に対し、
石膏下塗り中塗り土またはしっくい仕上げ塗りの場合 5,000円/M2~ になりますが
塗装やクロスが数年で塗り替え・張替えが必要なのに対し、漆喰や土壁の塗替えは10〜20年ごとと、
メンテナンスコスト・光熱費などを考慮すると長い目で見てコストダウンになります。
● 土壁のコストを下げる方法はありますか?
以下いくつかの方法が考えられます。
1 現代的構法の採用。
当事務所が取り組んでいる土壁の下地を竹小舞でなく、杉の木摺りにし、土を片面だけ塗る方法
(=荒壁片面塗り、中塗り仕上げ) にした場合は
約9,000/M2・・・約30,000円/坪 と竹小舞両面土壁塗りの6割程度に下がります。
塗り厚は片面塗りで下塗り・中塗り合わせ35〜40mm ですが、断熱材と組み合わせ最低限の土壁の性能(防火・調湿・蓄熱・吸音・・・)は確保できます。
もちろん、コストがあれば両面塗りで60〜70mm土を塗れば、更に効果は上がります。
2 土壁をつくる仲間を集め、自分たちで手を動かしワークショップで小舞から荒壁まで行う。
・・・職人さんや参加者への謝礼、材料費など実際はコストは極端に減るわけではありませんが(1~2割程度)、
つくった住まいに愛着がわくのと、土壁の補修方法が身につくので長い目で見てもコストダウンになります。
3 壁を荒壁や中塗りで終わらせておき、資金ができたら中塗りや漆喰などの仕上げ塗りをする。
・・・最初から全てを完成させる必要はなく、これまでよく行われている方法。
4 内部の間仕切り壁は一部だけ土壁にし、資金ができた時土壁に変える。
・・・3と同様。まず木や平板に塗装などで仕上げておく。
5 建物の床面積が少なくする。
・・・単に小さくするのではなく、吹き抜けやロフトと組み合わせるなど立体的な計画にして狭さを感じさせなくしたり、将来増築できるプランとする。
以上、土壁をコストの面であきらめず、内容とご予算に合わせてアイディアを一緒に考えていきましょう。
土やしっくいを使った土の家は時間と共に風合いが深まり、価値が出てきます。
● 土を塗ることのできる職人さんはいるの?
土壁や土を塗る仕事は少なくなりましたが、左官の方々は「日本左官組合連合会(日左連)」や「日本左官会議」
「左官を考える会」など、様々な団体を通じ技術研修を行い、若手への技術の伝承を行っています。
当事務所もその方々と連携させていただいていますので、全国どこでも土を塗ることができる優秀な左官さんを
ご紹介することができます。
経験上、全国どの地域にも土を塗る志の高い左官さんがいやっしゃるので、ご安心ください。